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「制作スタイルを大改造しました! ~タノシナルが作る、新しい制作システム~」
2012年、テレビ番組の制作&編集スタッフが集って創設した「タノシナル」これまでの制作現場のあり方を大きく変え、独自の制作スタイルで、いま注目の制作会社です。
番組制作はもちろん、数千人規模のイベント、メジャーな企業とのコラボ企画、そして自社が運営する新たなWEBサイト展開も進めています。
取材でうかがった会議スペース(下の写真)は、まるでインテリアショップかカフェのよう!
ご挨拶した際にいただいた名刺もとってもユニーク!
上下関係や役職がないフラットな制作体制なので、名刺に肩書はありません。それぞれができる仕事にチェックを入れるシステムなんだそうです。
『みんなでつくる!』が会社の基本姿勢のため、全員「パシリ」にチェックが入っていたのが印象的でした。
プロデューサー、ディレクター、ADといった従来の職制を廃止。全員が「クリエイター」というフラットな制作体制とは一体どんなものなのか? 社員の方にお話をうかがいました。
佐久間実空(さくま・みく)さん
別の制作会社から転職。TOKYO MX「エクストリームBeauty」で演出を担当。
伊藤宏治(いとう・こうじ)さん
大手ポスプロから転職。テレビやイベントの映像編集、自社サイト「ソノテガ!」のプロジェクト管理を担当。
小林龍介(こばやし・りゅうすけ)さん
別の制作会社から転職。番組のテロップやイベントのロゴデザイン、舞台美術やグッズ製作まで幅広く担当。
天谷窓大(あまや・そうた)さん
元大手IT企業のプログラマー。社内のシステム構築、自社イベント「エクストリーム出社」などを担当。
クリエイターが本来の演出作業に集中できるシステム!
━━ 佐久間さんは別の制作会社から転職されたそうですが、タノシナルに入社して思ったことは?
佐久間:クリエイターが演出作業に集中できるタノシナルの制作体制に驚きました!
━━ 具体的には、どんな体制なんでしょうか?
佐久間:一つは、ロケ場所探しや映像使用の許可取り、ネタのリサーチといった仕込みの業務を「コーディネーター」という専門スタッフが担当してることです。
━━ 「仕込み専門のスタッフがいる」というのはスゴイですね!
佐久間:数多くの制作現場を経験してきた方たちなので、ADさんがやるよりも、プロの仕事をしてくれるから心強いんです!
小林: 僕は、元ADなんですけど、うちのコーディネーターさんは仕事が早い!
佐久間:これって“ADあるある”だと思うんですけど、インタビューの文字起こしがあるのに、許可取りやリサーチもしないと間に合わない・・・…みたいなことありますよね。
小林: あるある!泣きそうになるよね(笑)
佐久間:でもタノシナルには、コーディネーターさんがいるから。私がロケとか現場に出ていても動いてくれているので、安心して現場に集中できます!
━━ 演出作業で頭がいっぱいのときに、これは助かりますね!
佐久間:そうなんです! 今ってコンプライアンスとかも厳しいから「抜けてた」「忘れてた」じゃ済まないことも多いので、めっちゃ助かってます。
うちでは編集室に寝泊まりすることはありませんね
━━ 伊藤さんは、ずっとエディターとしてお仕事をされてきたんですね。
伊藤:はい、そうですね。新卒で入って10年以上、大手ポスプロでエディターをやってました。その頃は、毎日毎日編集室にいて……もう住んでるって感じでしたね(笑)。
人気のトーク番組担当だったんですけど、膨大な収録テープに囲まれて、ずーっと卓の前に座っていましたね。
━━ 聞くだけでも過酷な環境ですね……
伊藤:そうですね、スタジオの予約表に普通に“10時~34時”って書いてあるんですよ。「34時ってなんだよ!」って(笑)そんな環境で仕事を続けることに疑問を持ち始めたとき、タノシナルで働いている友人に誘われまして…… 迷わず転職しました。
天谷:おお…… そうなんだ!
━━ タノシナルでは、ポスプロの編集室は使わないんですか?
伊藤:使いませんね。タノシナルには、テロップやイラストなどをつくるデザイナーとエディターから構成される「編集デザインチーム」というのがあって、編集室に一切入らないで、社内で映像を作れるんですよ。
佐久間:デザイナーさんもエディターさんも経験が豊富なので、私がオフラインしたデータを渡してイメージを伝えるだけで、どんどん形にしてくれるんです。
小林:僕は主にデザインを担当してますが、社内のみんなでつくっていく感じが楽しいですね。
ぶつかる時もあるけど(笑)
━━ 制作会社だとテープの入った大量の紙袋を見かけますが、こちらにはありませんね?
伊藤:はい。それはテープで編集しないからです。タノシナルでは、ファイナルカット、もしくはプレミアを使ったデータ編集しかやりません。だから僕、もう何年もハコ(編集室)に入ってないです。
佐久間:やりくりテープとか、この会社に入ってから見ないですね。
小林:タノシナルでは、テロップを入れる時もデザイナーとエディターの作業環境をネットワークでつないでデータ編集してるんです。
━━ “作業環境をネットワークでつないでいる”…… どういう事ですか?
伊藤:社内のサーバーに全社員がつながっていて、ロケやスタジオで収録した素材を誰でもさわれて作業ができるってことです。
だから、オフラインしたデータをもとにみんなで一斉に作業したりもできるんです。
一度に複数のデザイナーがテロップを入れたり、エディターが加工したり…… これで作業効率がかなりアップしましたね。
佐久間:私がつないだ拙いオフラインが、見る見るうちに変身しちゃうんです!
「朝早く来て、早く帰る」がモットー
佐久間:タノシナルは、朝9時半の始業ですからね。前いた会社は昼過ぎにボサボサ頭で出勤して、そのままダラダラと徹夜勤務という環境だったので、最初は時差ボケ状態でしたね(笑)
天谷:朝出てきて、みんなで一斉にオフィスを掃除するんです。だからゴミもたまらない。
佐久間:そう!部屋がキレイって仕事にもイイ影響が出るんだなって気づきました。気持ちに余裕みたいなものが生まれるんですよね。
━━ 朝早く始業して、遅くまで作業していたら、大変ですよね?
佐久間:うちは基本的に残業禁止なんです。遅くまで残っていると「早く帰らなきゃ!ちゃんと個人の時間を大切にしないとダメだよ!」と言われます。
伊藤:最初は「今日のうちに片づけちゃいたいのに……」と不満な気持ちもあったんですけど。
小林:そう!そう!でも、夕方仕事が終わって、空いた時間でライブに行けたり、他業界の友達と遊ぶことができたり。すごい暮らしに色が付きましたね。
佐久間:あー、その感じすごくわかります。ずっとデスクにいては思いつかない発想が、外に出るとたくさん吸収できちゃう。
伊藤:タノシナルに来る前は、編集室と自宅の往復だったからな(笑)
佐久間:伊藤さん、社内で息子さんの話をすることが増えましたよね。
小林:奥さんにしかられた話も多いけどね(笑)
テロップ原稿が簡単にできちゃうシステム
天谷:僕は元の会社ではプログラマーだったんですが、タノシナルにきて、はじめにやったのが「テロップAMAYA」というテロップ発注システムの作成です。
━━ 「テロップAMAYA」とはどんなものですか?
天谷:僕は、映像制作の現場ははじめてだったんですが、「これからテロップ原稿を作らなきゃ……」という声をよく耳にしたんです。
オフラインって結構大変じゃないですか、なのにそれが終わってテロップ原稿を作らなきゃいけない。みなさんバテバテの中でやってるんですね。
佐久間:わかるー(笑)
天谷:そこで、ナレーション原稿を流し込むだけで、テロップ原稿がつくれるシステムをつくってみたんです。
小林:これは画期的だと思う!
天谷:まだ手書きの方も多くて、スタッフ間で共有できないこともあったので、原稿の作成から発注までを手軽にネットでできるシステムにしたんです。
ネット上で原稿の確認ができるので、いつでも他の社員がチェックすることが可能です。
また担当者が原稿を修正すると登録している社員に自動的にお知らせメールが入ります。
小林:これは画期的だと思う!
“タノシナルが変わったことをしている”とアメリカから視察に!
━━ なんでも先日、編集デザインシステムのウワサを聞いたスゴイ方が来社されたそうですね。
伊藤:はい。来社されたのは、AdobeのAfter Effects(アフターエフェクツ)の米国シアトルの開発スタッフさんたちです。
佐久間:Adobeといったら国際的な企業じゃないですか!ビックリしましたね(笑)
伊藤:僕らのようにテープを一切使わず、専門のデザイナーを置いたり、効率的なシステムを構築して運用しているのは珍しいらしく……視察にいらっしゃったんです。
天谷:どうしてウチを?と聞いてみたんですけど「Adobeのソフトをすごく変わった方法で使用していると聞いたので」と答えが返ってきて…
小林:タノシナルにしかできないことをやっていると、いいことあるんだ!って思いました(笑)。
伊藤:いまシアトルの開発チームのシミュレーションに協力しています。
自社イベントで有名企業とコラボレーション!
━━ 映像制作以外にも、新たな領域にどんどんチャレンジされていますね。
天谷:タノシナルでは、非日常的なことをやってから出社する「エクストリーム出社」というイベントを行っています。
約100人の会社員が通勤途中に参加した「早朝水鉄砲運動会」
小林:エクストリーム出社は、もともと天谷の個人活動だったものをタノシナルで事業化したんです。
天谷:アマゾンジャパンさんとコラボして朝から「水鉄砲運動会」をやったり、好きな化粧品が使える「コスメバイキング」を開いたり、いろんな企業さんとコラボさせていただいてるんです。
伊藤:それといま、タノシナルが運営する自社サイトをスタートさせるべく、全社プロジェクトが動いています。依頼された仕事するだけではなく、自分たちが楽しくなることを自分たちの会社で行っていきたいと思っています。
━━ タノシナルは新たなメンバーを募集されますが、どんな人に応募してきてほしいですか?
天谷:新しいことをやってみたい人、いま仕事の環境を変えてみたいと思っている人。
佐久間:やりたいことがあるんだけれど、どうしていいかわからない!という人もぜひ!
伊藤:あとは、めちゃめちゃ過酷な現場にいる人、ぜひ一度タノシナルに来てみてほしいです。
小林:タノシナルのドアを開けるてみるとおもしろい事が待っていますよ(笑)。