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ポストプロダクションってどんなところ?
ポストプロダクションとは
ポストプロダクションとは、映画やテレビ番組、CM、ミュージックビデオ等の映像制作の過程において、撮影後の素材(テープ、データ、フィルム等)を用いて映像や音を編集・加工する作業を行う場所です。
「ポスプロ」と略される事が多く、「編集スタジオ」や「編集所」とも言われます。
撮影後のテープ素材をポスプロに持ち込むのは、主に制作会社等のディレクターや監督です。
彼らは実際の編集作業に立ち会って、ポスプロのスタッフに作業指示を出していきます。
編集作業は24時間を越えることもあるため、多くのポスプロが24時間体制をとっています。
一度の編集で大量の素材が持ち込まれますが、一通りの編集作業が終了すれば、完パケと呼ばれ実際の放送にも使用される1本のマスターテープが完成されます。
※完パケ(完成パッケージの略)
ポスプロで働くひとたち
編集室
ポストプロダクションは、その内部でEED(映像編集)とMA(音編集)に分けられ、EEDスタジオではエディターやオペレーターと呼ばれるスタッフが、MAスタジオではミキサー、MAオペレーターと呼ばれるスタッフがそれぞれ編集を担当しています。
これらはそれぞれ専門的なスキルを要しますので、1人の編集者がEEDとMA両方の作業を兼ねる事は稀です。
※EED(Electrical Editingの略)
※MA(Multi Audioの略)
EEDでは通常、エディターの下に編集アシスタントと呼ばれるアシスタントスタッフが付き、2名体制で編集作業を行う事が一般的です。
MAでも同様にミキサーの下にMAアシスタントと呼ばれるアシスタントスタッフが付きます。
マシンルーム
また、EED編集室には多くの場合マシンルームと呼ばれる機材室が併設されています。
編集作業では、持ち込まれる素材テープの種類によってさまざまな再生機が使用されますが、家庭用ビデオデッキの数倍もあるような大きな機材も多いため、これらの機材は編集室内ではなく、マシンルームにまとめられます。
マシンルームの機材と編集室の編集機は専用のケーブル等でつながれており、エディターは編集室内にいながらマシンルームの機材を自在にコントロールする事ができます。
マシンルームには、編集アシスタントやダビング・コピー、デジタイズ専門のスタッフ等が出入りし、編集作業前にあらかじめテープ素材を機材へ取り込んだり、編集終了後にテープに落とす作業などを行います。
また、納品用の完パケテープはそれをマスターとし、予備のコピーテープを作成することが一般的です。
※デジタイズ…持ち込まれるテープ素材を編集前にハードディスク等にデジタルデータ取り込む作業。キャプチャーとも呼ばれる。
その他
ポスプロには、実作業を担当するオペレーターやアシスタント、マシンルームのスタッフ以外にも、制作会社や監督らとのやり取りを担当する営業スタッフやデスクスタッフが勤務しています。
依頼される作業のヒヤリングを行い、オペレーターや編集室のスケジューリングを行ったり、作業の見積書、納品書、請求書等の伝票発行等も担当しています。
EEDの仕事について
EED(映像編集)は、リニア編集とノンリニア編集に分けることが出来ます。
リニア編集
持ち込まれるテープ素材を“出し”に、編集する納品用テープを“受け”とし、“出し”から“受け”へ直接記録(録画/REC)をしながら編集をします。
“出し”用と“受け”用とで少なくとも2台以上の業務用ビデオデッキと編集機を使用します。
直接記録をしながら編集するため、スピードが速く、スケジュールがタイトなテレビ番組の編集には多く用いられています。
ノンリニア編集
持ち込まれるテープ素材を事前にハードディスク等に全て取り込みます。
例えば素材テープが10時間分あれば10時間分の取り込み時間が必要となりますが、最近では時間を短縮して取り込みが行えるようなシステムを取り入れているポスプロも多くなりました。
取り込まれた映像データを元に、編集ソフトを使用してパソコン上で編集を行っていきます。
パソコン上で編集が行われるため、複雑な編集や修正が加えやすく、編集時間も短縮出来ます。
編集終了後は納品用テープへ書き出し(録画/REC)をします。
MAの仕事について
MAは、主に映像作品に音を加えたり、音の加工や調整を行う作業です。
音に特化したスキルが求められますが、基本的に映像に音を加える作業となるため、多くの場合で映像と音両方の知識が必要とされます。
主な作業内容は以下の通りです。
・音楽(BGM)を付ける
・ナレーション収録、吹替え収録
・効果音を足す
・音量や音質を調整する
映像素材(白完・画完)と音素材は、制作会社や監督によって持ち込まれますが、音楽(BGM)や効果音等の音源は音響効果スタッフが制作したり、MAスタジオ側にあるものを使用することもあります。
ナレーション収録や吹替え収録が行われる場合は、制作会社のスタッフや監督以外にナレーターや声優らが収録に参加します。
※白完:映像の編集は終了しているが、テロップやMAが入っていない状態
※画完(えかん):テロップも含め映像の編集は終了しているが、MAがまだの状態
アシスタントの仕事とは
ポスプロのアシスタントは、単にエディターやミキサーを目指す下積み期間と言うだけではありません。
アシスタントが任される業務量は膨大です。編集作業中のみならず、編集前後の作業も非常に多く含まれます。
では具体的にどのような仕事があるのでしょうか?
編集アシスタント
【編集前】
・編集室の準備(掃除など)
・編集に使用するテープの確認(使用するテープの種類や尺、本数など在庫も含めてチェック)
・事前に預かった素材テープをハードディスクに取り込んでおく
【編集中】
・エディターのサポート全般(編集中はエディターの指示に従って編集業務をサポートします)
・テロップ作成
・テープチェンジ(編集室とマスタールームを行き来して素材や受けテープを交換)
【編集後】
・編集室の片付け
・納品用テープのタイムコードやフォーマットを確認し、テープに付けるキューシートを作成
・完成テープをダビングして、マスターテープ以外に予備のコピーテープを作成
【上記以外】
・機材の管理、メンテナンス等
※キューシート:テープに何がどのように記録されているかを知るためのタイムシート
アシスタントは上記の仕事をこなしつつ、自身のスキル向上にも努めなければなりません。
忙しい中でも時間を見つけて機材マニュアルを読んだり、分からない事があれば積極的に先輩に質問するなど、自発的に勉強しなければなかなかスキルアップは適いません。
そのためにも日ごろから周囲と良好な関係を築くことも非常に重要です。