合格基準は『顔の黄金比』だけ!?採用現場の不確実性とは
人事部採用担当の世界を描いた『黄金比の縁』石田夏穂著という小説を読みました。
【あらすじ】
(株)Kエンジニアリングの人事部で働く小野は、不当辞令への恨みから、会社の不利益になる人間の採用を心に誓う。
彼女が導き出した選考方法は、顔の縦と横の黄金比を満たす者を選ぶというものだった。
自身が辿り着いた評価軸をもとに業務に邁進していくが、黄金比の「縁」が手繰り寄せたのは、会社の思わぬ真実だった。
主人公の人事部採用担当小野の合格基準は、顔の黄金比だけで○×をつけるというものです。
小野には会社への復讐心から、「3年以内に辞めそうな人」を採用しようとしています。
顔の黄金比、つまり顔のバランスが美しくルックスの良い人は転職先はいくらでもあるので早々に辞めていくという・・・。
そんなデータがあるのかないのか、とにかく小野の採用基準は明確です。
小野が人事部採用担当を務める(株)Kエンジニアリングは業界大手であり、ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニーと言われる日本的な会社です。
つまり、小野のような採用担当者はどこにでもいることが考えられます。
著者の石田夏穂さんは、「人間が人間を選ぶなんて絶対に無理だよな」と思ったのが始まりで『黄金比の縁』を書かれたそうです。
「人間が人間を選ぶことの胡散臭さ」
「何百人もの中から苦心して選抜しても、実際に仕事が出来るかは全く不明 」
「フィーリングや勘に頼りがちで公正性も客観性もない」
など、採用の現場における不確実性を如実に示した小説となっています。
あと、タイトルにもある『縁』についても考えさせられました。
菅田将暉さんが出演している『エン転職』のCMでも言っていますね。
菅田さん「転職決まったんだって?」
後輩 「結構こだわったんですよ」
菅田さん「大事だもんね、仕事って」
後輩 「運ですよ、運」
菅田さん「縁だね、それ」
転職は、「運」ではなく「縁」であると。
小説『黄金比の縁』を読むと、「運」も「縁」も同じと言うか、そんなことで決まるのか!?って感じです。
良い結果も悪い結果も、何らかの意思やタイミングが働いていて、「運」や「縁」がなかったと言われたらそれまでです。
いわゆる『お祈りメール』で、企業から「ご縁がなかったということで」と、不採用の旨を伝達されることがあります。
角が立たない表現なので便利使いされますが、もしかしたら「縁」で終わらせなくてはどうしようもないくらい、大した理由もない可能性もあります。
不採用に大した理由なんてない!?
不採用の理由を知りたい気持ちになる応募者もいるかと思います。
ただ、企業としては不採用の理由を公開する義務はなく、確認することは難しくなっています。
ただこれって、、、不採用の理由を伝えられないのがほとんどだからだと思ってもいいかもしれません。
小説『黄金比の縁』に出てくる採用担当者は「顔の黄金比」で合否を決めていると紹介しましたが、もう1名の採用担当者は「男性は学歴、女性は語学」という合否基準を持っています。
しかも、どの応募者を通過させるかという重要な話し合いの途中で、定時だからと切り上げる担当者もおり。
時間だからとしかたなく、適当な判断で通過者が決まっていくわけです。
さらには、新卒を2名しか採用できない状況の中、1名は「縁故採用」ときたもんだ。
採用担当者の胸先三寸や縁故によって、大企業の合格者が決まるわけです。
もちろん、これまでの採用実績や根拠、求人職種へのマッチ度などに基づいて合否を決めている会社はあります。
まともな企業運営を行っているところならば、いい加減な合否判断はしていないと思いますが、実際にこんな理由で不採用だったという裏話もあります。
×見た目が会社に合わない
×高学歴の女性は気が強そうと思うから
×体育会系じゃないから
×関西弁が苦手だから
×趣味が合わないから
嫌な現実ですが、面接官の好みや思い込みが合否に影響することは少なからずあります。
小説『黄金比の縁』を紹介しつつ、何が言いたいかというと、不採用理由なんか気にしてもしょうがないということです。
正当な評価を受けて、自分自身を見つめ直したり、次に活かすべく反省したりすることは大事ですが、曖昧でおかしな理由は山ほどあることを踏まえて次に進むしかないのです。
そんなもん!そんなもん!ということで、是非前向きに進んでいってほしいと願っています!
<石川かおり>