TV業界「日曜に必ず休みたい!」はアリ?ナシ?
最近、こんな希望をお持ちの番組制作アシスタントディレクター志望者の方々と面談をしました。
・Kさん(24歳女性)
「日曜に習い事がしたいので、必ず休みの会社が良いのですが。」
・Tさん(25歳男性)
「土曜か日曜のどちらか必ず休める会社を探しています。」
・Dさん(23歳男性)
「1週間のうち、必ず定時で帰れる日が半分以上欲しいです。」
このような働き方は、一般的な会社であればごくごく普通のことなのですが、、、
番組制作の仕事は土日休みとは限らず、例えそうだとしても“必ず”休めるとは言い切れません。
「休みがない」は間違い
番組制作の世界(特にアシスタントディレクター職)は、休みもなく働くイメージでしょうか?
キャリアトレインのサポート面談で転職希望者に聞くと、「休みが全然なくて、残業も多い」と皆さん答えます。
確かに、ごく一般的な会社員とは違い、必ず週休2日で休めるわけではなく、残業という概念すらない制作環境はあります。
しかし、最近の番組制作の世界は明らかに変わってきました。
■某老舗番組制作会社(社員数140名)の場合
「日曜は必ず休む」
2年ほど前から会社の決まりとなりました。
この会社の場合、制作番組はすべて自社制作なので、スケジュールも自社で調整することが出来ます。
日曜に社内作業やロケ、収録、取材などは絶対に入れないよう徹底しているそうです。
■某番組制作会社(社員数12名)の場合
「勤怠管理システムで月4日以上の休日」
スマホで簡単にアクセス出来る勤怠管理システムを導入し、社長が社員の勤怠を猛チェックしています。
休めていない社員がいたら、月内にまとめて休みを取らせる。
労働時間が長すぎる社員がいたら休日数を増やす。
など、社則に則って月単位で休日や労働時間の帳尻を合わせています。
■都内キー局の場合
テレビ局では各番組制作会社からのスタッフ派遣や、人材派遣会社からのスタッフがたくさん勤務しています。
そのスタッフ達の勤怠管理はテレビ局の責任となる部分が大きいのです。
数年前から勤怠管理に力を入れ始め、派遣スタッフのオーバーワークを防ぐ努力を見せています。
このように、まだまだ一般的な労働基準から見るとNGな部分は多々ありますが、テレビ業界も昔のままではいられないということがよくわかります。
番組スケジュールによる
番組制作会社の求人情報を見ていると、このような補足が書いてあります。
【勤務時間】
10:00~19:00 ※担当番組のスケジュールによって変動
【休日】
日曜 祝日 慶弔休暇 年末年始 夏期休暇 有給休暇※配属される番組によって変動あり
会社の規則で日曜休みや週休2日などと決まっていても、担当している番組の制作スケジュールによって休日や勤務時間はバラバラになります。
番組のジャンルによる違いも大きくあり、例えば同じ会社の社員でも、バラエティ番組を作っている社員と報道番組を担当している社員では、まったく違うスケジュールで動くことになります。
○報道番組の場合
パターン①
オンエア担当になると生放送のスタジオに入り、フロア担当としてディレクターの指示を受けながら番組進行を補助します。ディレクターはサブ(副調整室)に入り、様々なスタッフを指揮しながら番組の進行をコントロールします。生放送が終われば仕事は終了。反省会などを終えて帰宅します。報道番組は月曜~金曜に放送されることが多いですが、【曜日班】と言われ自分の担当曜日が決まっています。例えば、月曜担当ならば火曜は休みとなることも多く、ある程度ルーティンで休日を取ることが出来ます。
パターン②
報道番組の中で流すVTRを制作する担当になると、放送予定日に合わせて取材~編集~完パケ(VTR納品)となります。VTRを納品したら休めることが多く、取材中や企画が進行中の場合は休みが見えづらくなります。
パターン①と②にきっちり分かれているわけではなく、生放送スタジオ進行もしながら、VTR制作にも携わるスタッフもいます。
○ドキュメンタリー番組の場合
企画にもよりますが、長期間に渡り取材を続ける番組が多いです。一区切りがつくつかないは進行状況を見て判断となる為、急に休むことになったり、休む予定だったのに取材対象により変動することもあります。
○バラエティ番組の場合
報道のパターン②と同じく、ロケやスタジオ収録~編集~完パケ(VTR納品)して終わりです。週1のレギュラー番組の場合、決まった制作スケジュールに沿って進行していくので、ある程度休みが見えやすいということもあります。
<スケジュール例>
月曜:リサーチ、企画、会議、各種手配など
火曜:収録・ロケ準備
水曜:スタジオ収録やロケ
木曜:仮編集・VTRチェック
金曜:本編集・MA・プレビュー
土曜:放送・OAチェック
日曜:休み
○ドラマ制作の場合
連続ドラマでは約4ヶ月の撮影期間があります。その間、スケジュール調整で【撮休】になることも。ただし、撮休になるのが地方ロケでのことだったり、住まいの近くが仕事現場とは限りません。連ドラ撮影中の完全オフはなかなか現実的ではありません。連ドラが終了し、一段落着いたら多少の休みが発生します。しかし、次のクールの連ドラ製作が並行して進む場合もあり、一段落するのがいつやら状態になることもあります。
どのジャンルであろうと、制作職の場合は特定の曜日(土日)に必ず休めるとは限らないのです。
まったく休めないわけでも、残業過多が続くわけでもありませんが、不規則であることは間違いありません。
この不規則さに慣れることも番組制作の仕事のうち、働き方の最大の特徴とも言えますね。
≪石川かおり≫