「バレないだろう」の気持ちが危険。経歴詐称で懲戒解雇・・・!
「経歴詐称」というと重大犯罪のような響きですが、転職活動の際、ついつい「見栄えの良い履歴書」を作ろうとして、経歴を詐称してしまう人は少なくないと聞きます。
・退職年月を改ざんして職歴のブランクが無いように見せる
・正社員、契約社員、アルバイトなどの雇用形態を改ざんする
・すぐに辞めた職場を書かない
などは、印象を良くするための、よくあるパターンのようです。
その他にも、採用に有利なように
・学校中退を「卒業」と書く
・前科を書かない
など。
※履歴書の「賞罰」欄の「罰」は、確定した有罪判決を意味します。
採用されればこっちのものだ、これくらい大丈夫だろう、という気持ちがあるのでしょう。
しかし経歴を偽ることは、懲戒解雇処分の対象ともなる危険な行為だということを、認識しておかなくてはいけません。
経歴詐称について考えるときの前提として、雇用契約を結ぶ際、会社(使用者)が経歴の申告を求めた場合は、労働者は原則としてこれに応じなくてはならず、真実を告知する義務があるという原則があります。
では、実際に経歴詐称により懲戒解雇が有効とされた判例を見てみましょう。
【アクサ生命保険事件(東京地裁H21.8.31)】
試用期間中に経歴詐称(原告である労働者は採用の前年に、ある会社で就業していた経歴と、その会社と係争中である事実を伝えていなかった)が発覚し、解雇が有効となった事例。
経歴は採用選考結果に多大な影響を与えるものであり、意図的に履歴書等に虚偽の記載をすることは、従業員としての適格性を損なう事情であり得るとして、勤務態度などを含め、解雇は有効とされた。
【正興産業事件(浦和地裁H6.11.10)】
自動車教習所で指導員として勤務していた原告である労働者が、「高校中退」を「卒業」と経歴詐称したことを理由として懲戒解雇され、解雇が有効とされた事例。
自動車教習所は公益的な役割を担った施設であり、指導員には高度の技術・知識・人格等を要求され、また、指導員として人間的な信頼関係を保持する必要があることを考慮すると、学歴もその職務についての適格性や資質等を判断するうえで、重大な要素の一つと認められる。
高校中途退学者であることが雇用時に判明していたならば、指導員見習として雇用せず、指導員としての職務に配置しなかったと考えられるため、解雇は有効とされた。
すべての経歴詐称が懲戒処分の対象となるわけではありませんが、偽った学歴や職歴が採用の重要な判断基準となった場合や、真実を告知していたら採用しなかったであろう重大な詐称の場合は、懲戒解雇が有効となります。
会社だって、提出された履歴書を鵜呑みにするばかりではありません。
入社時に提出を義務付けている書類等で、内定者の身元や経歴の確認をしている会社も多いようです。
入社時に提出させる書類等は、会社によって様々ですが
年金手帳、雇用保険被保険者証、源泉徴収票、卒業証明書、住民票記載事項証明書、免許や資格の証明書、健康診断書、身元保証書、前職の退職証明書・・・などが挙げられます。
書類の他にも、外資系の企業で多いのが「リファレンス」。
採用選考中に、応募者の承諾を得たうえで、直近に在籍していた職場に在籍期間や職務内容、勤務態度などを尋ねる行為です。
経歴詐称が採用時や入社時に発覚しなかったとしても、思わぬところから、虚偽が発覚することは大いに考えられます。
会社と応募者、会社と社員も結局は「人対人」。信頼関係を築かなくては何も始まりません。
誠実に接し合うことが大切です。
社会保険労務士 平倉聡子
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