あれもドキュメンタリー番組!?知っておきたい現実
経済ニュース番組の制作スタッフとして約6年間携わってきたKさん(30歳)
アシスタントディレクターからディレクターになったのですが、家の事情で数か月間テレビ業界を離れていました。
Kさんはテレビ業界に入った時から、「ドキュメンタリー番組のディレクターとしてやっていきたい」という目標がありました。
経済ニュース番組でも、世の中で起きていることをありのまま伝えるというのはドキュメンタリー性がないわけではないのですが、人に密着取材して、その人のリアルを伝えられるような番組を作ってみたいと希望していました。
Kさんのようなドキュメンタリー番組志望者は一定の割合でいるのですが、テレビ業界スタート時からいきなりドキュメンタリー番組を担当出来る方はあまりいません。
まずは、番組制作の基本を知ることを優先し、ドキュメンタリー以外の番組で勉強しているアシスタントディレクターはたくさん見てきました。
しかし、将来的に必ずドキュメンタリーに携われるかというと、みんながみんなというわけにはいかない印象があります。
それもそのはず、そもそもドキュメンタリー番組自体が、番組全体の中でそんなに多くはないと思いませんか?
代表的なドキュメンタリー番組
≪NHK≫
・NHKスペシャル
・プロフェッショナル 仕事の流儀
・ドキュメント72時間
≪日本テレビ≫
・NNNドキュメント
≪TBSテレビ≫
・バース・デイ
・情熱大陸
≪フジテレビ≫
・ザ・ノンフィクション
・NONFIX
≪テレビ東京≫
・ガイアの夜明け
レギュラー放送ではなく、スペシャル番組(特番)でドキュメンタリーが放送されることはよくあります。
例えば、今でしたら「ダイアナ妃没後20年」のドキュメンタリー特番が各局で放送されています。
『ダイアナ妃没後20年、王子たちが語る知られざる素顔』(NHK-BS1)
『ダイアナ妃の真実 あの悲劇から20年』(BS朝日)
『衝撃の死から20年 新証言! 悲劇のプリンセス・ダイアナ 最期の1日~追跡!新たな謎と真相 愛と哀しみの半生~』(フジテレビ)
とは言え、レギュラーで決まった頻度で制作しているドキュメンタリー番組はやはり多くはないので、ドキュメンタリー専門の制作会社も全体の割合からすると少ないのです。
ただ、ドキュメンタリー番組にも種類や特性があります。
Kさんもディレクターの先輩に言われたそうです。
「ドキュメンタリーって言ってもどんなのが作りたいの?」
上記で紹介した番組は、比較的重くて深いネタを取り上げているドキュメンタリー番組です。
しかし、【ドキュメンタリー】を広義で考えると・・・?
これもドキュメンタリー!?
ドキュメンタリー番組とは
「虚構に基づく脚色を加えずに、事実に基づいて作られた番組」
そういった意味では、下記のような番組もドキュメンタリーと言えます。
・歴史秘話を解き明かす
・自然や動物などの環境モノ
・大家族シリーズ
・行列が出来る〇〇
・警察密着24時
・お見合い大作戦
・紀行モノ
密着して取材するし、世の中で起きていることを伝えるのは同じです。
作りものではない真実という部分でも同じ。
取り上げるネタによって重い軽いはありますが、これらもドキュメンタリーのジャンルとして語ることが出来ると思います。
しかし、結構好きな人が多いのに、なぜドキュメンタリー番組は少ないのでしょうか?
ドキュメンタリー番組制作の現実
短期間で仕上げるバラエティ番組や、旬の話題を素早く伝える情報番組とは違い、人物や物事を何か月~何年も追い続けてやっと形になるのがドキュメンタリーです。
とにかく時間がかかるのです!
イイもの(使える画)が撮れなければ放送出来ないかも知れないので、当然放送日は未定。
入ってくるお金も当てにならない!
これぞ筋書きのないドラマと言われるドキュメンタリーの世界ですが、制作費や人件費を考えると制作会社としてはかなりしんどいことが想像出来ます。
ドキュメンタリーに向いている人
これまで、ドキュメンタリー番組を制作しているディレクターやプロデューサーとお話しする機会がたくさんありました。
そういった方達とお会いするといつも感じるのは、『人間的な魅力に溢れている方が多い』ということです。
・一見ぶっきらぼうでも、面倒見が良く情に厚い方
・相手の話をよく聞き、決して否定することなく受け止めてくれる方
・人と関わるのが好きで、相手の魅力を自然に引き出してしまうトーク力のある方
とにかく話していて退屈しない、温かみのある方が多かったです。
また、血の通った番組作りというのでしょうか。
「取材した方に喜んでもらいたいから良い番組を作りたい」
と、観てくれる方のことを考えて丁寧に番組を作っているディレクターもいました。
人が好きで、人に興味を持てる方でないとドキュメンタリー番組制作には向いていないかも知れません。
≪石川かおり≫