番組制作会社勤務のIさん(24歳)をご紹介しよう。

Iさんはアシスタントディレクター(AD)歴2年目。

学生時代、海外ボランティアとして各国を訪れ、
その活動報告ビデオを制作したことがきっかけとなり、報道に興味を持ったという。
いつか自分も伝える側の人間になりたいと心に決めていたのだ。

新聞社やテレビ局を中心に就職活動を行い、
最後はとにかくバイトでも何でもいいので経験を積むことだと考え、
卒業ギリギリまで焦ることなく自分に合う会社を探し続けた。

Iさんが就職した制作会社は、報道や情報番組に強く、少人数の会社ということもあり、
社員一人に対する役割分担が多いのも特徴だ。
アシスタントのうちから権限が与えられるので、
取り上げたいネタがあれば自ら取材して放送に乗っけることも可能なのである。

Iさんの希望が叶い、日本テレビの報道番組に配属され、
ADとして1年目を終えようとしていた頃、あの大惨事が起こったのだ。

3.11東日本大震災発生

発生直後からIさんは取材クルーと共に被災地に乗り込んだ。
まともな衣食住が確保されていない中でカメラを回し、被災地の状況をレポートしたのである。

少し落ち着いてからは、東京と被災地を行ったり来たりしながら、
震災関連の番組を数ヶ月間に渡り作り続けたのだ。
私達もIさんの決死の取材VTRを目にしていることだろう。

まだ経験が浅いアシスタントであるIさんにこのような大事な役割を与えたのは、
Iさんの日頃の頑張りを見てくれている人がいたからだ。

学生時代の自主制作でカメラや編集機に親しんでいたこともあり、
技術的なことは覚えが早かった。

ただ、あのような非常事態では、何よりも度胸がなければやっていられない。

想像を絶する状況下での精神を保つ根性
パニック状態での判断力
伝えたい瞬間を逃さない瞬発力

とても1年目のADとは思えない活躍を見せたと言う。

最近は報道番組の特集コーナーを手掛けており、
「オレオレ詐欺の新手口」、「未成年者の犯罪」、「税金の無駄使い」などの、
巨悪や社会問題と日夜格闘しているのである。

と言っても、このような堅い内容ばかりでもない。
「行列が出来る〇〇屋」や「新名所案内」なども特集することもある。

番組作りの根幹は何も変わらないので、一つ一つ心を込めて取り組んでいるのだという。

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≪石川かおり≫