ADの仕事が一変するひと工夫
テレビ番組を作るには、まずはアシスタントディレクター(AD)からスタートするのが一般的です。
何にでも始まりがあるように、ADからスタートしてディレクターやプロデューサーへとステップアップしていきます。
【マスコミ業界AtoZ】~マスコミ業界大研究~アシスタントディレクターからのキャリアステップ
アシスタントディレクターと言うからには、そのままの意味でディレクターをアシストする仕事です。
ディレクターの指示は絶対で、逆らうなんてもってのほか。
ADはディレクターの召使いか!?奴隷か!?
そんな風に感じたかどうか、ADの仕事がつまらなくて辞めていく人は大勢います。
ある番組制作会社の新卒採用では、毎年多めに採用するそうです。
10人入社したら半年後には半分いないことが想定されるからです。
1年後には。。。3年経って1名残っていたら御の字なんて事態もありえるのです。
その残っている1名はきっと、「ADの仕事はつまらない」を「面白い」に変えた1人だと思います。
工夫一つでADの仕事にやりがいを見出し、毎日を楽しいものに変えることが出来るのです。
ADの仕事が面白いわけがない
ADはディレクターやプロデューサーになる為の言わば修行期間です。
修行と聞いて、「楽しそう♪」とは連想しないのではないでしょうか。
ADとしてテレビ業界に入る人達はよくこう言います。
「右も左もわかりません」
右も左もわからなければ不安ですし、楽しいはずがありません。
わからないことだらけでヘマを繰り返し、ディレクターや先輩ADに怒られる毎日です。
ADのうちに辞める人
上記で説明したように、怒られるばかりの毎日に耐えられないADが結局は早期退社となります。
「怒られたから辞める!」と小学生ではないので、先輩達の叱責が直接の原因ではありませんが、大概、なぜ怒られるのか理解していないことが原因で辞めていくのだと思います。
番組制作への目的意識が低いADほど、言われたことを応用出来ず、ただ文句を付けられているだけだと感じてしまいます。
仕事に対して受身の姿勢でいる限り、奴隷状態から抜け出すことは出来ません。
引っ張りだこのADが存在する
「うちの番組に来ない?」
「今度新番組が始まるんだけど、参加してくれない?」
「特番手伝ってよ」
このように、売れっ子のADと言うのは存在し、様々な方面から声がかかるものです。
制作会社の中でも番組によって班が分かれており、番組を成功させたいプロデューサーやディレクターは出来るだけ優秀なADを自分の下へ来させたいと思うものです。
では、引っ張りだこのADにはどんな特徴があるのでしょう。
①気が利く
②「ディレクターやプロデューサーになりたい!」と周りにアピールしている
③自分から常にアイディアを発信する
辞めていくADとは対照的です。
目的の為に動けるADこそ、10人に1人残るADなのです。
ADのつまらない毎日が一変した瞬間
ケース①某番組制作会社でADとして働くT君
T君は、タレントがたくさん出演する番組を担当しています。
以前はディレクターに言われるがまま、出演候補タレントの事務所に電話して、出演してくれるかどうか交渉する役割を担っていました。
ADであるT君をぞんざいに扱う事務所もありますし、出演交渉もうまくいかないことも多々ありました。
それでもT君は悔しいとも思わず、「ダメでした」とディレクターに報告するのみ。
タレントの選択は自分発信ではないので、ただの伝書鳩状態の流れ作業です。
ある時、ディレクターが他のことで忙しく、出演候補タレントの選択が追いつかないことがありました。
T君は誰に言われたわけではなく、自分から出演候補タレント一覧を作成したのです。
普段からテレビやネットなどのメディアで、旬なタレントや、ブレイクしそうなタレントをチェックしてきました。
番組制作者として常にアンテナを張っていたのです。
いつもの出演交渉も、自分の提案だからこそ熱が入ります。
何人かのタレントはT君の案によって出演が決まりました。
T君は、この時に初めてと言ってもいいくらい、番組制作へのやりがいを感じたそうです。
ケース②テレビ東京プロデューサー佐久間宣行さんのお話
佐久間プロデューサーの著書『できないことはやりません~テレ東的開き直り仕事術~(講談社)』の中で、面白いエピソードが載っていました。
人気番組をたくさん手掛けてきた今でも、「自分にはモノをつくる才能はない」と語る佐久間プロデューサーですが、著書では「何もないから、なんでもやれる」数々のエピソードが紹介されていました。
中でも番組制作の楽しさ・面白さに目覚めた瞬間のお話が興味深いです。
ドラマの撮影で、「サッカー部のマネージャーが作ってくる」という設定のお弁当を用意しなければならなかったそうです。
AD時代の佐久間さんは、「普通の手作り弁当を用意してはつまらないんじゃないか」とふと思ったそうです。
「サッカー部のマネージャーだから・・・サッカーボールのおにぎりなんてどうだろう?」
先輩スタッフ達にも好評で、初めて自分から提案し、動いて、評価された瞬間だったそうです。
入社1~3年はどんな仕事でも我慢の時
テレビ業界に限らず、どんな仕事でも最初からうまくいくはずもなく、仕事の面白みなんて知るのは果てしなく先だと感じるものです。
私も新人の時や新しい仕事に転職した時は、どんなに興味がある仕事でも面白いなんて感じませんでした。
今でもそうですが、わからないしうまくいかない時ほどとにかく動くことにしています。
とにかく思いついたことをやってみると、何かが生まれるものです。
それが例え失敗であっても、「これはダメなのね」とわかるのです。
あと、私は「やった感」も大事にしています。
自己満足の世界かも知れませんが、鬱々と何もしないでいるより、「あぁ、働いたぁ」と1日を終えたいと思うタイプです。
誰かがアナタの仕事を楽しくさせてはくれません。
自分次第でいくらでも世界を一変させることは出来るのです!
《石川かおり》