人材流出はコミュニケーション不足が原因だった!?
「社長が何を考えているのかわからない」とアシスタントプロデューサー(AP)のTさんから相談がありました。
Tさんが勤務しているのは社員数10名ほどのテレビ番組制作会社です。
社長は現役のプロデューサーとして活躍している方で、Tさんは番組のことだけではなく、社長のアシスタントとして会社のこともサポートしています。
視野の広い仕事が出来るので、その業務自体には積極的に取り組んでいるのですが、肝心な社長(プロデューサー)とのコミュニケーションがいまいちなのです。
あからさまに仲が良くないという様子ではないのですが、会話が弾んだことはないとTさんは言います。
自らのレギュラー番組を数本抱えている社長はとにかく忙しい。
社内に1日中いることはほとんどなく、Tさんにさらっと指示を出していなくなるのです。
Tさんを信用して色々任せているからこその対応なのですが、Tさんは「こうすればいいですか?」「この部分なんですけど」など、相談しなから仕事を進めていきたいそうなのです。
TさんはAPといってもまだ1年も経験しておらず、不安でいっぱいなのです。
不安だという気持ちが社長に伝わっていない(伝えられない)まま、モヤモヤと不安が不満に変わってきてしまいました。
社内にいる他の社員に聞いても「社長はああいう人だから」と達観しています。
辞めていく社員も多く、「いつの間にかあの人がいない!」状態です。
番組以外の映像制作にも取り組み始めたようなのですが、会社としてどういう方向に向かっているのか一社員にはまったくわかりません。
社長はまだ知りませんが、Tさんは会社を辞めようとまで思い始めました。
誰かにいじめられているわけでもなく、仕事内容にも満足していますが、社長との意思疎通がはかれないことで会社全体に不信感を抱くようになってしまいました。
某コンサルティング会社は「よい企業文化をつくるには、社内コミュニケーションの活性化が欠かせない」と説いています。
このコンサルティング会社調べによると、会社の理念や価値観が浸透しない理由の第一位は『コミュニケーション不足』だったそうです。
2位以下は、『価値観が明文化されていない』『価値観と評価制度があっていない』『社員にやらされ感がある』と続きます。
社内コミュニケーションが不足していると、「トップが何を考えているのかわからない」という不満が生まれるそうです。
そこで、コミュニケーションを活発にするうえで効果が高いのは“褒める”ことだそうです。
おだてたり、お世辞を言うのではなく、社員をきちんと見た上で分析・承認・感謝⇒賞賛となります。
期待を寄せることも忘れてはなりません。
上からの“褒める”だけではなく、社員同士で“褒め合う”ことは価値観が共有されていることになるそうです。
Tさんに聞いてみたところ、社長に褒められたことがないそうです。
「自分のことを見てくれていないような気がする」と言うTさんはとても寂しそうでした・・・。
《石川かおり》