健康診断は労働時間?研修や社内行事は?・・・「労働時間」の正しい解釈とは
「労働時間」とは何でしょうか。
・・・働いている時間に決まっていますね。
しかしこの「労働時間」、人によって様々に解釈されており、定義が曖昧になっていることが多いのです。
労働基準法では、労働時間について次のように定められています。
◆ 休憩時間を除き1週間に40時間を超えて、労働させてはならない。
(特例事業は44時間まで)
◆ 休憩時間を除き1日に8時間を超えて、労働させてはならない。
(時間外労働を命ずるには、就業規則等への定めと労使協定が必要)
また、休憩時間については
◆ 労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、
8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を
労働時間の途中に与えなければならない。
◆ 休憩時間は、一斉に与えなければならない。
(一斉に与えない場合は労使協定が必要。また特定の業種に例外あり)
◆ 休憩時間は自由に利用させなければならない。
と定められています。
休憩時間の条文だけをみても、労働時間を正しく解釈するヒントがあります。
例えば、昼食時間の電話当番。
机でお昼ご飯を食べながら、かかってきた電話に対応する場合、この昼食時間は「労働時間」となり、休憩時間にはなりません。
昼休み中、一度席に戻ったらところたまたま鳴った電話に出た、という程度なら仕方が無いですが、電話番をすることを命令されている場合や、暗黙の了解になっている場合は「労働時間」と考えてよいでしょう。
同じように、お客さんや荷物の到着を待っている時間のような、いわゆる「手待ち時間」も労働時間と考えられます。
「休憩時間」とは、労働者が完全に自由に使える時間でなくてはなりません。自由利用ができない時間は、労働時間と解釈されるのです。
尚、労働基準法にあるように、休憩は「労働時間の途中に」与えなくてはなりません。
8時間の労働に対して1時間繰り上げて終業させたり、スタートを1時間遅らせて途中の休憩を無しにすることはできません。
以上のように、労働時間について考えるときは、改めて労働基準法の条文に目を通してみるのも良いでしょう。
その他にも、労働時間なのか否か、よく争点となる時間があります。健康診断、研修、会社の行事などです。
ひとつずつ考えてみましょう。
《健康診断》
会社が従業員に対して行う健康診断には、一般健康診断と特殊健康診断があります。
一般健康診断は、毎年1回行われる定期健診のことです。
特殊健康診断とは、有害物質を扱う仕事をしている従業員や、リスクの高い作業を行う従業員に対して実施する健康診断です。
特殊健康診断は業務に密接に関係するものなので、労働時間に当たると解釈されます。
それに対し、一般健康診断は業務との関連性が無く、個人の健康を維持するためのものなので、労働時間としなくても良い、とされています。
ただし「受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい」という通達が出ているので、実際は労働時間に含めている会社が多いようです。
《研修》
新入社員研修やリーダー研修、その他スキルアップのための研修など、教育訓練に力を入れている会社も多いかと思います。
研修時間が労働時間になるか否かは、参加を強制されているか、任意のものかによって判断されます。強制参加の研修は、当然に労働時間となります。
例えば参加しなかったことを人事評価の基準にしたり、欠勤扱いにしたりと、不利益な扱いをしないのであれば、労働時間ではないと判断できるでしょう。
《行事》
社員旅行やスポーツイベント、親睦会などの社内行事についても、研修と同じような考え方ができます。
行事への参加が強制的なものであれば労働時間、完全に自由参加であれば労働時間では無いと解釈できます。
しかし、行事でやっかいなのは「強制参加」と明示していないが、暗黙の強制参加となっている行事があることです。
黙示的に参加を強制されている場合は労働時間と考えられますので、注意が必要です。
いずれの場合も、「労働時間」は使用者の指揮命令下に置かれているか否かで判断されます。
判断を誤ると、知らぬ間に時間外労働をさせたり、未払い賃金を発生させたりとトラブルにも繋がりますので、労働時間の定義を曖昧なままにしておかないことが大切です。
社会保険労務士 平倉聡子
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