『ブラック研修』で出鼻をくじかれる新入社員
先日、朝の情報番組でこの4月に入社した新人の研修の様子を取り上げていましたが、その研修のやり方に非難が殺到しています。
その会社は新人研修を専門の会社に任せているのですが、自社の社長名や理念などを答えられなかった新入社員に対して講師から驚きの言葉が飛び出します。
「会社のことわかりません、社長わかりません、結構いたぞ。社長がわからないって。大丈夫か君ら。代表者、誰かわからないんでしょ。皆さんの会社は、一言で言ったら採用ミス」
“採用ミス”
「お前なんかを採用したのは会社のミスだ」というわけです。
画面には、あまりの言葉に涙を流す女子社員の姿が。
確かに、自分の会社の社長の名前も知らないのは困ったものですが、新入社員の希望を打ち砕くような言葉は教育でも研修でもないのではないでしょうか?
案の定、世間の反応は散々なものです。
「働く気が失せる!」「採用ミスは人事の責任!理不尽!」「洗脳研修!」「新人いじめ!」
このように、「?」が付くような新人研修は他にもあります。
こんな研修は嫌だ!?
・山小屋で1週間生活
・滝に打たれて精神修行
・駅前で絶叫スピーチ
・自衛隊に体験入隊
・エンドレスラジオ体操
・100キロウォーキング
・富士登山
・無人島サバイバル
なんだ、面白そうじゃないか!というような研修から、遠慮願いたい研修まで。こんなのはホンノ一例です。
こんな研修が何かの役に立つかと言ったら、、、あまり意味を考えない方が良いのでしょうね。
苦労を分かち合うことで、新入社員同士の連帯感が生まれたり、学生気分から脱却することが出来たり、まぁ何かしら得るものはあるのかもしれませんね。
ちなみに私は新入社員時代の営業研修で、クライアント役の先輩社員から電話でひたすら意地悪を言われ続けるという研修を受けた記憶があります。
何が着地点なのか正解なのかわからないまま終わり、モヤっとした気分になったものです。
どんな研修をやってもいいと思いますが、それをやることでどんな問題点が発見出来て、何を克服しなければならないのか、筋が通っていて欲しいものです。
なぜ厳しい新人研修が必要なのか?
特殊な仕事はどうか知りませんが、一般的な会社員の仕事では、100キロも歩きませんし、絶叫する場面もありません。
上記のような研修をなぜ会社は時間とお金をかけてまでやるのか?
会社としてはこのようなことを期待しているようです。
・精神力を鍛える
・責任感を持たせる
・目標・目的意識を強くする
確かに、社会人としては必要不可欠な点ではあります。
一見、「?」が付くような研修でも、やり遂げた新人はやる前の自分とは何かが違うはずです。
ただ、「?」の数があまりにも多い新人研修は考えものです。
理不尽に社員をふるいに掛けるような研修は「ブラック研修」と呼ばれ、懸念されることが出てきてしまいます。
①退職者が続出
②来年の採用に影響
「ブラック研修」を行っているという噂が「あの会社はブラック企業」と断定され、志望者の数が減ってしまうなんてことも。
新人研修だけで終わっては意味がない
研修が終わり、社内に戻った途端に感じる違和感。
職場の雰囲気が悪い、社員の士気が低い、何をすればいいのか指示もない。
新人研修であんなに会社の理念やなんやかんやと叩き込まれてきたのに、一体何だったんだ!
会社は、1日~1週間程度の新人研修だけ張り切っても仕方ありません。
・社内コミュニケーションは円滑か?
・フォローアップ体制は出来ているのか?
・教育OJTは機能しているのか?
新入社員に求めるだけ求めても、会社として上記のようなことが整っていなければ研修を活かすことが出来ません。
新入社員たちがこれからの長い会社員生活を本当の意味で乗り切るには、受け入れる側の見直しも必要ではないでしょうか?
《石川かおり》