不可能を可能にするスーパーAD!諦めない者だけが手にする達成感!
某テレビ番組の制作会社勤めて1年半。
アシスタントディレクター(AD)のM君(23歳)に人生最大の?ピンチが訪れた。
大学を卒業して、新卒として番組制作会社に入社し、
苦しい時期も乗り越えてきたM君。
最初の3ヶ月、その後6ヶ月、1年・・・とすでに何度辞めたいと思ったことか(笑)
時には先輩達から厳しい指導も受け、
失敗に対しては容赦なく怒鳴られることもあった。
「一生懸命やっているのにそんな言い方しなくても・・・」
不平不満ばかりが募る時期もあった。
そんな日々があったからこそ今回のピンチに冷静に対応出来たのかも知れない。
今回M君に与えられたミッションは、
「ダチョウの卵を翌朝の9時までに用意すること」
しかもディレクターからのこの指令を受けたのは、夜10時を回っていた。
翌日は担当している番組の収録だった。
その為、前の日は直前準備で大わらわ。
当然、早い時間に帰宅することは出来ず、徹夜覚悟でいた。
しかし、『ダチョウの卵』を追いかける夜になるとは・・・。
この日までの会議や打ち合わせでは、
収録に『ダチョウの卵』を使う予定はまったくなかった。
ただ、なるほど・・・その手があったか!と思うほど、
そこに『ダチョウの卵』が登場するのは最適だと、番組内容を思い出しながらM君は思った。
前日までの話が翌日にはコロッと変わるなんてことは日常茶飯事の番組制作の世界。
M君もこれまでにもちろん経験はしてきたが、
思いっきり当事者になるのは初めてだった。
ADの仕事は「出来ません」が許されない。
新人の頃からそうやって鍛えられてきたのだ。
物理的に本当に絶対無理ならばいくらなんでも仕方ないが、
ベストを尽くす前に諦めるなんてありえないのだ。
指令を受けたM君はありとあらゆる手段を使って『ダチョウの卵』を探し求めた。
なにせ夜10時過ぎ、お店も会社も電話は通じない。
茨城にダチョウの卵を販売している場所を発見した。
ここなら買うことが出来るらしい!
しかし・・・開店は朝10時・・・。
ダメだ、収録は9時からなのに・・・到底間に合わない。
しかも往復5時間はかかる・・・。
う~う~ん・・・。
ひたすらネット検索。
築地市場で『ダチョウの卵』が買える店があることもわかった。
開店は早朝5時。
たくさんあるとは思えない『ダチョウの卵』を誰かに買われてしまっては大変だ。
空が白み始めた頃、M君は築地に向かったのだ!
開店1時間前の早朝4時。
目当ての店のシャッターが上がり、その先に見えた物にM君の胸が踊った。
探し求めていた『ダチョウの卵』が並んでいたのだ。
お店の人に無理を言って、開店前にも関わらず購入させてもらった。
急ぎ足で会社に戻ったのは早朝5時。
ディレクターに「よくやった!」と褒めてもらい。
M君は泣きそうになったそう。
他のAD達もそれぞれの作業でいっぱいいっぱいにも関わらず、
みんな声を掛けてくれた。
築地で手に入らなかったら、5時間かかっても始発で茨城に行く手筈でいた。
9時の収録開始に間に合わないが、1時間遅れくらいで済むはず。
そのくらいなら収録の流れとして大丈夫だった。
それでも手に入らなかったら・・・。
第3の手段は考えていなかった・・・。
しかし、実のところ『ダチョウの卵』が手に入らなかった時のことは、
ディレクターが先を見越して各所に手を回していたのだ。
ADは出来るだけのことをする。
ディレクターも別の次元で出来るだけのことをする。
ADだけが頑張るのではない。
ディレクターだけが凄いわけでもない。
スタッフ全員がアシストし合い、番組が作られるのだとM君はつくづく思ったそう。
M君はまたひとつ成長を遂げたのだった。
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