みなし残業があるのはブラック企業!?実は従業員にメリットがある制度だった
先日、キャリアトレインの転職サポートでこんな相談がありました。
「みなし残業制に納得がいかない」
マスコミ・エンタメ業界で転職を考えているAさん(29歳)は、前職でみなし残業制度があり、納得がいかないまま勤務していたそうなのです。
『みなし残業』とは『固定残業制度』とも言われます。
賃金や手当ての中に、数十時間分の残業をするという前提で、あらかじめ一定時間分の残業代を含ませておく制度のことです。
☆みなし残業(固定残業代)が、月20時間の会社の場合☆
(例)
月給250,000円の場合、固定残業代35,000円(20時間相当分)を含みます。
※20時間を超える残業代は追加で支給。
時期によっては、みなし残業時間分の残業をしない月もあります。
その場合でも、みなし残業(固定残業代)は支払われます。
Aさんは、勤務時間を超過した分の残業代は100%貰えなければおかしいと考えていて、数十時間分の残業があらかじめ含まれている給与設定に違和感を感じていました。
では、『みなし残業がある=ブラック企業』なのでしょうか?
答えは「NO!」
みなし残業は制度を正しく使っていれば違法ではありません!
ホワイト企業と呼ばれている企業でも導入されているケースはたくさんあります。
みなし残業(固定残業代制)のメリット
みなし残業制度の導入には企業側と従業員側双方にメリットがあります。
■企業のメリット
・残業代を一律で計算することができるので、賃金処理の効率化を図れる。
・毎月の人件費変動を抑えることができる。
・企業にも従業員にも残業削減の意識が生まれる。
■従業員のメリット
・実際にみなし時間分の残業を行わなくても、決まった残業代は減らされることなく支給される。
・効率重視で仕事がしたい人には、定時で帰れて残業代込みの給料をもらうことができる。
・残業時間を厳密に証明できなくても残業代を受け取れる。
ではなぜ、みなし残業がある企業はブラック企業に見えてしまうのでしょうか?
それは、みなし残業制度を利用して下記のような違法行為を行う企業もなかにはあるからです。
NG!みなし残業時間を超えた分の割増賃金を追加で支払っていない
NG!みなし残業代が基本給に含まれている(通常の賃金と明確に区分する必要あり)
NG!雇用契約や就業規則にみなし残業に関する規定が記されていない(従業員に周知していない)
NG!深夜手当や休日出勤さえも支払っていない(固定残業の時間分あくまで通常の残業のみ)
NG!みなし残業時間分の残業を強制している
NG!みなし残業と残業の実態がかけ離れている
企業選びの際、みなし残業の有無で判断するのではなく、平均残業時間やみなし残業を超過する残業時間などをポイントにした方がよいと思います。
みなし残業の時間数は?
残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、
臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
以下を超えることはできません。◆年720時間以内
◆複数月平均80時間以内(休日労働を含む) 「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」
◆月100時間未満(休日労働を含む)
引用:厚生労働省「時間外労働の上限規制」
みなし残業の時間数は、残業時間の上限である『月45時間』に設定している企業や、月の平均残業時間40時間程度でも『臨時的な事情がある場合』の特別条項による『80時間』に設定している企業もあります。
キャリアトレインのクライアント先であるマスコミ・エンタメ業界の企業では、やはり『月45時間』が多い印象です。
一番少なくて、『月7時間』という番組制作会社もあります。
今求人を行っている企業のデータをザクっと確認したところ、多い順で『月45時間』『月40時間』『月30時間』『月35時間』『月25時間』・・・といったところです。
何度も言いますが、みなし残業(固定残業代制)は適切に運用すれば違法でも何でもなく、残業の削減や業務の効率化などに繋がる制度です。
導入する企業は増加しているので、制度をきちんと理解したうえで進んでもらえればと思います。
<石川かおり>