映像は作りたいけどADは嫌!?
先日、映像制作について勉強する学部がある大学にお邪魔しました。
自主制作で映画やドラマを制作したり、映像技術の実習も盛りだくさんあるカリキュラムを誇る学部です。
就職活動真っただ中の学生さん達に進路についてお話を聞かせてもらったのですが、、、
そこで衝撃。
ほとんどの学生さん達が映像業界には進まないと言うのです、、、
この大学の学部からは、毎年多くの学生さん達が映像業界(主にテレビ業界)に就職していました。
なのに、18年卒の学生さん達は1社も映像関係の会社を受けていないそうなのです。
なぜなのでしょうか???
詳しくお話を聞いてみたのですが・・・
映像業界に進まない理由
下積みが嫌
学生さん達のお話を聞いていると、やはり映像を作ることは好きだと言います。
自分たちで脚本を書いて、演出して、編集して、1つの作品を作り上げる喜びは学生時代に知りました。
だからこそ、下積みで苦労しなくても映像は作れると考えているのです。
「映像は作りたいけどADは嫌」
とのこと・・・。
アシスタント時代に経験する、休みもままならない労働環境も映像業界を敬遠する大きな理由です。
映像を作ることは彼らにとって“楽しいこと”なのに、なぜ辛い思いを“させられ”なくてはならないのか。
というわけです・・・。
現実主義
映像業界に進んで、長く働くことが出来るのか不安だと言います。
倒産しないか、給料は上がるのか、ボーナスは出るのか、退職金があるのか。
「テレビ局には入りたいけど、制作会社は嫌」
待遇も労働環境も、保証がないと怖くて飛び込むことが出来ないそうです。
一般企業に就職して、映像は“趣味”で作りたい。
そうです・・・。
なぜADをしなくてはならないのか?
テレビの世界ならば、アシスタントディレクター(AD)からスタートするのが一般的です。
TV-CMや広告制作の世界では、プロダクションマネージャー(PM)と言います。
いわゆる下積み・修行期間ですが、なぜそんな期間が必要なのでしょうか?
主に、下記の理由が大きいと映像業界の方のお話を聞いていると感じます。
■作り方を知る
制作過程で発生する作業や手法、技術的なことを学ぶのはもちろんですが、制作は1人でするものではありません。
1時間の番組にはすべての関係者を合わせると、軽く100人を超える方達が関わっていると言います。
多くの人間関係の中で、モノづくりをすることはいきなり出来ることではありません。
■責任を取る
制作過程で起こるトラブル処理や、不測の事態に対しての責任の取り方。
アシスタントのうちから諸先輩の動きを見ておくことにより、善悪の判断や正しい対応の仕方がわかるようになります。
また、学生のそれとは違い、職業として制作に携わる責任感は最初から備わるものではありません。
■見方が変わる
プロの映像制作はビジネスです。自己満足で作る映像とは異なり、スポンサーや多くの利害関係の中で作品を作ることになります。
川上から川下まで、作品が出来るまでの仕組みやシステムを知ることで、映像に対する見方が業界に入る前と後で変わることになります。
まだまだあるかと思いますが、某番組制作会社の社長はこんなこともおっしゃっていました。
「ADのうちならわからないので教えてくださいが通用する」
出来なくて当たり前、知らなくてもしょうがないとされるのはアシスタント(下積み)のうちだけ。
その過程をすっ飛ばしたら自分自身が苦しいというのは明らかですね。
下積み期間は決まっていない
では、アシスタント(下積み)をどのくらいやれば良いのか?
そんなことは決まっていません。
よく、「ADからディレクターになるのに何年かかりますか?」という質問を聞きますが、何となく皆さんの平均値があるだけで、3ヶ月だろうと3年だろうと5年~10年だろうと、自分次第と言えます。
未経験でテレビ業界に入って、数か月でディレクターデビューした方を知っています。
※ディレクターにも段階があり、一番初歩のディレクターとしてですが。
4~5年、ADとして力を蓄えてからディレクターデビューする方も多くいます。
個人のステップアップは誰にも強制されるものではなく、誰のせいにも出来ません。
学校等で映像を学んでいた方が陥る、「すぐに作れるようになる」という幻想があります。
学生時代は自分達の好きなように映像制作を楽しんできたのに、プロの世界では通用しない。
そういう方達に限って、すぐに辞めていってしまう現象を数多く見てきました。
そして、こんな風に言って辞める方が多いです。
「映像は趣味でやります」
プロの世界の複雑な人間関係や、出来ないことを克服しようとせず、中途半端に辞めていく方が多いような気がしますが、果たして本当に趣味で映像作っているのでしょうか???
≪石川かおり≫