2016年テレビ業界にも指導の嵐が!
テレビ番組制作会社の人が見たら、「イラッ」とするような記事がありました。
タイトルは「30歳で年収1000万円を狙える企業はどこ?」
引用:ITmedia ビジネスオンライン 9月13日(火)
リサーチサイト『ヴォーカーズ』に寄せられた社員クチコミからピックアップされた会社らしいのですが、名だたる大手企業の中でも目立っていたのは『テレビ局』でした。
記事にはこんなコメントまで、、、
「残業の多さと給料が比例する?」
おいおいおい!番組制作会社のスタッフはめちゃくちゃ残業しているけど、給料に比例していませんが、、、
番組制作費は一般的にこのような流れとなっています。
スポンサー企業→広告代理店→テレビ局→番組制作会社→まだまだ続く・・・
テレビ局から貰える制作費から番組制作会社は何とかかんとかやり繰りするのです。
プロデューサー、ディレクター、放送作家、出演者費用、技術費、編集スタジオ、ロケ費用、テロップ制作発注、弁当代、交通費・・・etc
番組制作にかかる費用を挙げればキリがありません。
それでも番組制作費は年々下がる一方だというから無理があります。
番組制作会社は利益を出すのが精一杯、持ち出しになったという話も聞いたことがあります。
この状況では、番組制作会社のアシスタントディレクターが満足な収入を得るのは構造的に無理な話です。
アニメ制作会社や書籍出版編集プロダクションなど、テレビ業界に限らず下請けという存在の会社ではどこも同じような話で、会社はスタッフに満足のいく給与をあげたくないわけではないのですが、そんなことはおかまいなしなのは“法”です。
テレビ業界にもメスが入り始めた!?
「労基が入った!」という、企業にとってはきょわい言葉があります。
労働基準監督署(労基)とは、各地にある労基法違反の取締りをしている官庁です。
主に、残業代未払いや最低賃金、パワハラ等の労働環境をチェックし、企業に改善を求めるのが仕事です。
①労基署から呼び出し
②労基署の立ち入り調査
よほどのことがない限り、まずは企業の担当者が労基署に呼び出され指導を受けるパターンです。
再三の指導・是正勧告に従わない企業は、最悪の場合“送検”されることも!
恐ろしいことに、労働基準監督官は逮捕権を持っているのです。
これまでまったくなかったわけではないのですが、2016年に入ってから、番組制作会社や映像編集会社(ポストプロダクション)などへ労基からの指導が続々と入っているのです。
ハードワークと待遇が比例しない番組制作会社や映像編集会社などは、労基からの指導に対応するだけでも一苦労です。
下記の3社は今年に入り労基署からの指導を受けた会社です。
指導内容は、時間外、休日出勤、深夜早朝勤務に対する手当の未払いや労働時間に関してでした。
番組制作会社:N社の場合
すべての社員に対して、これまで残業代等を一切支給していなかった為、改善するよう指導が入りました。
そこで、ディレクターに残業代を支払う為に月額固定給を下げた為、猛反発に遭うことに。
結果、ディレクター陣の退職が相次ぎ、番組制作自体が立ち行かない状態になってしまいました。
番組制作会社:O社の場合
労基の指導前に、社則の整備や休日出勤の見直しなどに取り組んでいた為、関係書類の提出で済みました。
○○時間以上の勤務には残業代を支給し、休日・深夜・早朝勤務には100%手当を出すことになりました。
そもそも、過剰な超過勤務を防ぐ為の取り組みをしているO社のような番組制作会社が増えている事実もあります。
映像編集会社:U社の場合
過去5年分のスタッフの勤務実態を調査されることに。
膨大な資料の準備に追われ、数カ月に渡る労基署との攻防戦が繰り広げられました。
労基の指導は2回目となっており、改善が見られない為にやや強めな是正勧告を受けることに。
労基の指導を受けたらもちろんですが、厳しい状況の中でもスタッフの労働環境や待遇を改善することに取り組んでいる番組制作会社や映像編集会社は増えてきました。
・週1日以上は絶対に休み
・徹夜は禁止
・長期休みの取得
・残業等の手当支給
労働基準法違反のない会社からすれば当たり前のことかも知れませんが、番組制作会社や映像編集会社では難しいことなのです。
一方でまだまだこんな意見も、テレビ業界では多数派を占める現実もあります。
「お金<好き」が勝るテレビ業界
某番組制作会社のプロデューサーは言います。
「好きでやってるんだから、残業代ってなんだよな!」
確かに、労働量に見合った対価を求めるのであれば他の業界に行った方がましかも知れません。
労働量に見合いませんが、暮らせるほどの収入を得て、好きを仕事にしていることに満足している人がたくさんいるのがテレビ業界です。
「ものづくり」「クリエイター」「業界人」???
一般的な尺度で生きていない人と言うのはいるものです。
苦しい中でも、番組制作会社や映像編集会社は良い方向に変わろうとしています。
可能な限り待遇を良くしても、やはり一番大切なのは、「好き」という気持ちで番組制作に取り組むスタッフがいなければどうしようもありませんが。
《石川かおり》