新社会人のための「給与明細の見方」
今年4月の新社会人の数は、全国で84万人と推定されているそうです。
新入社員のみなさんは、社会人として初めてのお給料を受け取ることも、楽しみにしていることでしょう。
初任給を受取る際、会社から「給与明細」が渡されます。
(近ごろは紙で渡されず、WEB明細を利用している会社も多いようです)
学生時代のアルバイトの給与明細と違って、様々な項目に数字が入っています。
今回は、このちょっと複雑な給与明細の見方について、ご案内します。
まずはお給料の“額面”をチェック
給与明細の多くは「支給項目」欄と「控除項目」欄に分けて表記されています。
支給項目欄に並ぶ金額を合計したものが、いわゆるお給料の“額面”、控除項目欄はお給料から天引きされる項目を記してあるものです。
まずは支給項目を見てみましょう。
支給項目には、基本給のほか、一般的に通勤手当や住宅手当、役職手当や家族手当など、毎月固定で支給される項目と、時間外手当や休日勤務手当、深夜勤務手当など、働いた実績に応じて変動する項目があります。
手当の種類は、会社の就業規則や賃金規程で任意に決められているものなので、どんな種類の手当があるのか、計算方法はどうなっているのかを確認しておくと、万が一誤りがあった場合に、見つけることができます。
こんなに引かれるの!?控除項目をチェック
控除の欄に並ぶ項目は、○○保険料、○○税と、学生時代のアルバイトの給与明細では、馴染みの無いものが多いかもしれません。
給与から控除される項目の主なものは
・健康保険料
・厚生年金保険料
・雇用保険料
・所得税
です。
これらの控除項目を合計すると数万円になり、「こんなに引かれるの!?」と驚く人も多いでしょう。
だからこそ、引かれたお金が何に使われるのか、知っておくべきだと思います。
健康保険料は何に使われている?
健康保険は、ご存知のとおり、病気やケガの治療費として使われます。
その他にも、病気やケガなどで働けない期間の手当金や、出産したときの給付金、健康診断費として使われたりします。
また、年々増大している高齢者の医療費を支えるためにも使われています。
健康保険料は、給与月額を基準にして決まります。
年に一度保険料の見直しがあり、給与が高くなれば保険料も上がる仕組みです。
(固定給に変更があり、大幅に月額が増減したときは、随時見直しもあります)
厚生年金保険は誰のため?
厚生年金保険料は、将来自分が受取るための“貯金”ではありません。
今あなたの給与から天引きされている保険料は、現在年金を受け取っている人の、年金の財源となります。
「いまの若者が老齢になった頃には、支払った保険料より受取る年金のほうが少ない」
という報道をよく目にするようになったこともあり
「自分で貯金したほうがいい。保険料を払いたくない!」
という声があがっている事実もあります。
しかし、老齢になる前に年金を受け取る可能性があることも、ぜひ知っておいて欲しいと思います。
たとえば障害年金。
保険料を納めていれば、事故や病気などで障害状態になった場合、障害の状態によっては障害年金を受け取ることができます。
また、万が一、厚生年金加入中に亡くなった場合には、遺族は遺族年金を受け取ることができます。
高齢者の年金のため、そして加入者の万が一の時のために、厚生年金保険料は使われています。
厚生年金保険料の額も、健康保険料と同様、給与額に応じて決まります。
雇用保険料の使い道
「失業したら、失業手当がもらえる」ということは、聞いたことがあるかもしれません。
会社を退職して次の仕事に就くまでの間、生活保障として給付を受け取ることができます。
みなさんの給与から天引きする雇用保険料は、この失業時の給付(求職者給付)をはじめ、育児休業中や介護休業中に受取れる給付金など、就業を促進したり、雇用を守ったりするために使われます。
毎月の給与からは税金が引かれる
お給料には、基本給、残業手当、休日出勤手当など、手当の名称にかかわらず、税金がかかります。
(ただし、「通勤手当」として通勤定期券代の支給がある場合、月10万円までは税金がかかりません)
毎月の給与から引かれる税金は「源泉徴収所得税」といいます。
所得税は、給与額から健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料を引いた額に税率をかけて計算します。
ここまでが給与明細の一般的な項目です。
入社2年目の6月になると、これに加えて前年の給与所得をもとに算出された住民税も、給与から天引きされることになります。
会社によってはこれらの項目以外に、厚生年金基金の掛金や労働組合費、共済会費など、独自の項目もあるかもしれません。
これも就業規則などで確認すると良いでしょう。
ちなみに、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料は、会社も保険料を負担しています。また就業中や通勤中のケガなどに備えて、会社は労災保険料も負担しています。
給与の手取り額だけでなく、額面がどんな内訳なのか、どんな保険料や税金を払っているのか、また会社が自分のためにどんな保険料を払っているのか、を知っておくことは、社会人として必要なことだと思います。
ぜひ、初任給の給与明細をチェックしてみてください。
社会保険労務士 平倉聡子
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