5月が過ぎても五月病に注意! 会社と新入社員の関係、良い例&悪い例
5月も終わりが近づき、この春に社会人デビューした新入社員は、少しずつ職場の雰囲気に慣れてきた頃かもしれません。
それと同時に、4月から気を張り詰めていたせいで、疲れが出始める頃でもあります。
ゴールデンウィーク明けには特に話題となる「五月病」。なにも6月になれば、ぱったりと無くなるわけではありません。5月を過ぎても、上司や先輩社員は、新入社員が何に悩んでいるかを注視し、指導とフォローがバランス良くできているか、常に確認しておかなくてはなりません。
新入社員のこんな様子を見逃すな
■4月には威勢の良かった挨拶や返事が小さい
■先輩や上司に声を掛けられないでいる
(わからないことがあっても、質問できずにいる)
■注意された後に、必要以上に落ち込んだ様子をしている
このような様子が見られた場合、「今の若者は覇気が無い!」などと、若者の性質と決めつけて切り捨てず、新入社員とのコニュニケーションの取り方を見直してみる必要があります。
新入社員のメンタルの不調に気づかず放置していると、欠勤が続いたり、早期の退職に繋がったりしてしまう恐れがあります。
上司や先輩が気をつけるべきこと
今まで見た会社で、新入社員を受け入れる環境を改善すべきだと感じた例、いわば「悪い例」を挙げてみます。
≪憤慨ばかりしている上司≫
何年ぶりかに新入社員を採用した、ある会社。
入社後、しばらくして上司に話を聞くと・・・
仕事を教えてもメモを取らない
電話が鳴っても率先して取らない
上司や先輩にすぐに確認や報告をしない
仕事の優先順位を考えない
周りが残業していても、手伝えることがあるか声もかけずに退社する
などなど、新人への不満を述べたあと、「近ごろの若者は常識が無い!」と憤慨。
なぜもっと気配りできないのか、本当にやる気があるのか・・・自分の「常識」から考えて、これらを不満に思う気持ちは解ります。
しかし、地域において世代の違う人との交流も少なく、学校を卒業するまで社会との関わりが大変少ない現代で、社会に出たばかりの新入社員に、初めから社会人の常識を求め過ぎても、備わっているはずはありません。ましてや、企業ごとにも異なる「社内の常識」は、新人にわかるはずがありません。
気になる行動、改めて欲しい行いがあれば、「なっていない」と憤慨するのではなく、まず口に出して注意をしてください。その際、理由を付け加えてあげることが近道です。
何度も質問をすると、その度に先輩の手を止めることになってしまうから、必ずメモを取ること。
電話は取引先の名前を覚えるし、対応する力がつくから、率先して出てね。
この仕事は、完成を待っているお客さんがいるから、優先して進めてください。
・・・などなど。
社会人経験のある人からすれば、「それくらい言わないでもわかるだろう」という事でも、新人には言わないと伝わらないこともあります。
常識的にわかるだろう、と先輩社員が勝手に判断して、具体的な指示を出さないことも、新入社員を混乱させ、すれ違いが生じます。
一度しっかり伝えて、同じことを何度も注意することが無いよう、言葉を添えればよいのではないでしょうか。
≪メンターをうまく活用できていない≫
新入社員に、年齢の近い先輩社員を「メンター」として付け、仕事の指導から日頃の悩みまでの相談役になる制度を作っている、ある会社。
制度としては良いのですが、この年初めてメンター役になった先輩社員は、指導を張り切り過ぎて、たいへん厳しい指導をしていました。強い言葉で叱るところから始まり、だんだんと「厳しい」を通り越して、冷たい態度を取るようになってしまいました。これでは新人が悩みを相談するどころか、仕事上の質問をすることすら出来なくなってしまいます。
結果、新人はどんどん元気が無くなり、上司が退職の相談を受けるまでになりました。
これは、先輩社員がメンターの役割を正しく理解していないことが問題でした。
制度を作れば良いというものではありません。会社はメンターを指名する際、その役割をしっかりと伝えておく必要があります。
こんな会社の未来は明るい!
逆に、新人教育のお手本になるような、すばらしい会社の例もあります。
≪新人のやる気を起こさせる会社≫
その会社は従業員10人未満の小企業ですが、2人の新卒を採用し、熱心な教育をしています。
社長自らが、自分の経験をもとにその業界についての座学を行い、現場や会議への同行をさせたり、課題図書を出したり、資料作成などの課題提出をさせているそうです。
また、打合せで意見を出させて発信する力をつけさせたり、次年度の新卒採用の面接に同席させて、学生と社会人の視点の違いを考える機会を与えたりしています。
それに加え、小企業ゆえに視野が狭くならないようにと、大企業の人事部や営業部長を呼んで話を聞くという教育もしているとのこと。
新人教育は、時間とお金を使いさえすれば良いものではないと思います。通常、小企業だと時間的、経済的な余裕が持てず、ついつい教育を後回しにしてしまいがちですが、上記を良い例として挙げたのは、この会社が新人に対して、「いつも見ているよ、気にかけているよ」という想いが伝わってくるからです。
費用や時間が多くかけられなくても、可能な範囲で、工夫をして教育をしている会社も、たくさんあると思います。
この例の会社では、新入社員もこれを受けて、「はやく会社に貢献できる人間になりたい」と言っていました。
社会に出て何年も経つと、自分が新入社員だった時の記憶は、ほとんど残っていないかもしれません。期待に胸を膨らませて入社し、しかし現実は厳しく、新しい環境に慣れるだけで、精一杯だったのではないでしょうか。
上司や先輩社員は、そんな時代が自分にもあったことを思い出し、会社に興味を持ってやってきてくれた社員を、大切に育てよう、という気持ちで、新入社員と向き合って欲しいです。
社会保険労務士 平倉聡子
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