番組制作アシスタントディレクターの現状:人気低迷は本当?その理由は?

2024年9月13日

テレビ番組制作の現場でディレクターの補助を行う役割を担うアシスタントディレクター(AD)。

具体的には、スケジュール管理、出演者の手配、ロケ地の選定、機材の手配など、さまざまな制作業務を担当し、テレビ番組がスムーズに進行するための重要なポジションです。

番組制作職に興味のある方はもちろん、なんとなくADさんのお仕事がどんなものかご存知の方も多いかと思います。

ちなみに、この9月にはキャリアトレインの転職サポート経由で2名のADさんが誕生しました。

しかし、年々番組制作職を希望する方は少なくなっている現実はあります。

興味はあっても、ネット上の情報などを見ると、「きつそう」というイメージが先行してしまう方もいるのではないでしょうか。

ただ、アシスタントディレクターを取り巻く環境や採用に関してなど、年々変化が見られ、数年前とはまた違う状況になっています。

実はアシスタントディレクターは不足していない

「ADが足りない!」と、番組制作会社や番組制作の現場で悲鳴があがっていたのは、少し古い話しになっています。

一昔前とは違い、アシスタントディレクターの労働環境は大きく改善されています。

長時間労働や過酷な労働条件が問題視されることが少なくなり、働き方改革の進展によって労働時間が適正に管理されるようになりました。

その結果、離職率も下がり、アシスタントディレクター不足は実際には起こっていない状況があちこちで見られます。

厳選採用になっている

アシスタントディレクター不足ではなくなると、どうしても採用は厳選採用となってしまいます。

質の高い人材を確保するための措置ではあります。

未経験者でもポテンシャルの高い方や何かスキルを持つ人材が求められ、制作会社は確実に優れた能力を持つ人を選出しようとしています。

それでも大量採用する理由

ただ、番組制作職専門の派遣会社などでは、アシスタントディレクターを大量採用することがあります。

繁忙期に合わせて人員を確保するために派遣会社の利用が見られます。

そのため、アシスタントディレクターをある程度の人数を確保するため、年間を通して採用活動を積極的に行っています。

アシスタントディレクターの採用時期

アシスタントディレクターの採用は、テレビ番組制作のスケジュールや各社の事情により異なります。

しかし、一般的には年度末や年度初めに募集が増える傾向があります。

この時期は、新しいプロジェクトや番組がスタートする時期であり、制作現場での人員が必要となるためです。

また、未経験者も積極的に応募できるタイミングとなっています。

アシスタントディレクターの役割と仕事内容

ここで改めて、アシスタントディレクターについて説明します。

ディレクターの補助

アシスタントディレクター、通称ADは、テレビ番組制作においてディレクターを補佐する重要な役割を担っています。
ディレクターが手がけるクリエイティブな仕事を円滑に進めるため、ADは多岐にわたるサポートを行います。
具体的には、撮影スケジュールの調整や撮影機材の準備、出演者の連絡調整などが主な業務です。

情報収集と企画立案

アシスタントディレクターは、番組制作の初期段階から深く関わります。
情報収集や取材を行い、番組の企画や構成案を練ることもADの重要な役割です。
取材先の選定や資料収集をADが行い、魅力的な内容を構築する手助けをしています。
バラエティ番組においても、斬新なアイデアや面白いエピソードを見つけ出すために、ADの経験とセンスが活かされます。

長時間労働と労働環境の課題

アシスタントディレクターの役割は多岐にわたり、それぞれが高い責任を伴うため、時には長時間労働が避けられない場合もあります。
特に新しい企画が立ち上がったり、放送直前の修正が必要になったりと、不規則な勤務時間が発生しやすいのが現状です。
リアルタイムの情報番組では、放送前後の段取りや確認作業に追われることが多く、ADの労働環境が厳しいと感じることもあるでしょう。
しかし、最近では労働環境の改善が進んでおり、働き方改革や労働時間管理の適正化が図られています。

人気低迷の背景

デジタル化とテレビ業界の変化

テレビ業界全体がデジタル化の波にさらされ、大きな変化を迎えています。
特にインターネット動画サービスの拡大により、若年層のテレビ離れが顕著になり、テレビ番組の需要が低下しています。
これに伴い、番組制作会社の経営環境も厳しくなり、制作予算の縮小や番組数の減少が進んでいます。
このため、テレビ番組制作におけるADの需要も減少し、職業としての魅力が薄れているという見方もあります。

テレビ離れ

若年層を中心にテレビ離れが進行していることも大きな要因です。
インターネットやスマートフォンの普及により、娯楽や情報源が多様化し、テレビ番組を視聴する時間が減少しています。
テレビ離れにより視聴率が低下し、広告収入も減少するため、テレビ番組制作会社は厳しい経営状況に直面しています。
この結果、新規のADの募集も減り、不況の影響を受けています。

他の職種との競争

ADという職種が他の職種との競争にもさらされています。
特にIT企業やエンターテインメント業界など、魅力的な職業が多い現代では、未経験者でも応募できる職種が増えています。
ADのきつい労働環境が改善されたとしても、他の職種に比べると依然として厳しい面が多く、応募者が他の職種に流れる傾向があります。
また、ディレクターやプロデューサーといったキャリアパスが魅力的であるにもかかわらず、初期段階の仕事内容が過酷であるため、人気低迷の一因となっています。

アシスタントディレクターのキャリアパス

ディレクターやプロデューサーへの昇進

アシスタントディレクター(AD)としてのキャリアを積む中で、多くの方がディレクターやプロデューサーへの昇進を目指します。
テレビ番組制作の現場で実際に働くことで、制作全体の流れや各職種の役割を深く理解することができるため、ステップアップのチャンスが豊富にあります。
未経験からスタートした場合でも、積極的に学び続ける姿勢が重要で、実績を重ねることで信頼を得ることができます。

デスクやバックオフィス転向も

また、アシスタントディレクターとしての経験を活かし、デスクやバックオフィス業務に転向する選択肢もあります。
デスク業務は、スケジュール管理や予算管理などの裏方の役割を担い、番組制作の円滑な運営を支える重要なポジションです。
こうしたバックオフィスの業務は、制作現場とは異なり、労働環境が比較的安定しているため、長期的なキャリアを考える際には魅力的な選択肢となります。

同じような業界への転職

テレビ番組制作の経験は、他のメディアやエンターテインメント業界でも高く評価されます。
特にバラエティ番組等で培った企画力や演出力は、広告制作やイベント運営など、同様にクリエイティブな要素を持つ職種で活躍する際には大いに役立ちます。
不況が続く中でも、独自のスキルを持つ人材は企業からの募集要項に合った人材として求められていますので、転職の際には自信を持って挑戦することが大切です。

フリーランスとしての可能性

フリーランスとして活動するアシスタントディレクター(ディレクター)もいます。
フリーランスになることで、働き方の自由度が増し、自分のペースで仕事を進めることができます。
特に、テレビ番組制作の業界では、一つの番組に捉われず複数のプロジェクトに関わることができるため、多様な経験を積むことができます。
しかし、安定した収入が保証されていないため、自分自身で案件を開拓する能力が求められるのは事実です。
それでも、フリーランスとしての働き方は、やりがいがある上に、自分のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。

おわりに

アシスタントディレクターの将来展望

アシスタントディレクター(AD)の現在の状況を考えると、テレビ番組制作の現場での役割や重要性は依然として高いものの、さまざまな課題に直面しています。
ADの職種自体への応募者が減少している一方で、労働環境の改善や労働時間の短縮が図られています。
この背景には、テレビ業界全体の変化やインターネット動画サービスの台頭、若年層のテレビ離れといった大きなトレンドがあります。

近年のテレビ番組制作会社や番組そのものの構造変化がADの将来に大きな影響を与えることも考えられます。
たとえば、バラエティ番組の制作現場では未経験者の採用が減り、経験者を厳選して採用する傾向が強まっています。
これにより、ADとしての基礎的なスキルが高められ、ディレクターやプロデューサーへのキャリアパスが明確になることでしょう。

一方で、ADの呼称の廃止や新しい呼称の導入という動きも見られます。
これは、職種のイメージ向上や待遇改善にも繋がる可能性があります。
さらに、テレビ業界の働き方改革が進むことで、ADの応募件数が再び増加することも期待されます。

最終的には、アシスタントディレクター自体の仕事内容がどのように進化し、新たな挑戦をすることになるかが鍵となります。
テレビ番組制作の現場では常に新しいアイデアと工夫が求められており、ADとしての役割も柔軟に適応していくことが求められるでしょう。
若い世代にとって魅力的な職業にするか、業界全体での取り組みが必要不可欠です。

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<石川かおり>

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