苦労は続くよどこまでも!?それでも得られる番組制作の醍醐味
BSのドキュメンタリー番組を制作しているアシスタントディレクター(AD)のS君と話した時のこと。
なんと5月は1日しか休みがなかったそうです。
私「大変だねぇ・・・。」
S君「ディレクターなんか3ヶ月くらい休んでないっスよ。」
私「!?」
NHKの番組を多く手がける番組制作会社で勤務しているADのY君も同じようなことを言っていました。
Y君の直属の上司であるプロデューサーは、常時3番組以上を掛け持ちしていて、休んでいるところを見たことがないそうです。
あれ?
ADは・・・
休みがない
残業が多い
超悲惨
って言われているけれど・・・???
ディレクターやプロデューサーの方が大変そう・・・。
ディレクターやプロデューサーになっても楽にはならないと思うか?
はたまた
番組制作者としての充実と捉えるか?
上の上を目指すディレクターやプロデューサーは明らかに後者なのです。
“大変”の種類が違うAD・ディレクター・プロデューサー
ADの仕事の大変なところ
最初は先輩達に言われたことをこなすだけでも精一杯。徐々に言われなくても自主的にアシスト出来るようにならなければならない。
自分が番組を作っているという感覚が得づらく、先輩達の要求に応えることが仕事になってしまう。
自分のペースでは作業が進まず、長時間労働のわりに無駄な時間を過ごすこともしばしば。
いつ先輩から連絡が来るかわからないので、たまの休みでも携帯は手放せない。
オンエアの前の日や、作業が終わらない日は徹夜が続くことも。
体調不良でも満足に休むことが出来ないこともあり、精神的に不安定になってしまうADもいる。
ディレクターの仕事の大変なところ
番組の実務責任者として、企画立案、構成、台本作成、取材、演出、ロケ、スタジオ収録、撮影、編集など、番組制作のすべてをこなさなければなりません。昔は多数の制作・技術スタッフで細分化されていた業務も、昨今はディレクターが何でも出来なくてはならなくなりました。
スタッフや出演者への司令塔として、人を動かすコミュニケーション能力や気遣いが必要となります。
また、ADを育てるのもディレクターの大事な仕事です。プレイングマネジャーとして、自らの実績を過大に求められる中で後輩を育てなければなりません。
プロデューサーの大変なところ
番組制作の全てに責任を負う最高責任者(統括)として、番組予算の調達・管理、スポンサー(クライアント)との折衝、キャスティング交渉、様々なトラブル処理、企画会議仕切り、複数のディレクターへの指示、スケジュールなど、書ききれないほど広範囲の仕事をしています。ただし、どんなに苦労して作り上げた番組でも、結果(視聴率)が出せなければ責任をとるのはプロデューサーです。
『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』の菅 賢治プロデューサー曰く、、、
プロデューサーとは「ラーメン屋のオーナー」である。
オーナーは新規出店を決め、出店場所によってお店のコンセプトや料理、内装などの大枠を決めて、そこでようやく腕利きのラーメン職人を雇う。職人にコンセプトを伝えて、そこから先の詳細は職人にまかせる。プロデューサーとして、はじめの座組やコンセプトメイキング、雰囲気づくりなどをして、そこからはディレクターや出演者にある程度まかせるというイメージのようです。
「あしたのシゴトが面白くなるウェブマガジンCareer Supli」より
ポジションによって番組制作での役割が違うのはもちろん、“大変”と感じる部分はこんなにも違うのです。
ADからディレクターやプロデューサーになると
番組制作のお仕事は、ディレクターになっても、プロデューサーになっても、上を目指し続ける終わりなき旅路のような職業ですが、でもやっぱり上に行くほど良いこともあります。
キャリアアップするとこんな良いことが!
- ・自分で企画した番組が作れる
- ・自分が作った番組で日本中・世界中に影響を与えることが出来る
- ・憧れのタレントや有名人と人脈が築ける
- ・自分でスケジューリングを立てることが出来る
- ・報酬アップ
まだまだたくさん!
ADからディレクターやプロデューサーになるには
テストがあるわけではなく、資格があるわけでもない番組制作スタッフの昇進。
ADとして何年働けばディレクターになれると決まっているわけでもありません。
ディレクターや会社の上司など、ADの努力を見てくれている人が必ずいるものですが、チャンスは待っているだけでは掴めません。
冒頭にお話したADのY君は、テレビ業界に入って今年4年目になるのですが、「ディレクターになりたい!」アピールをしているそうです。
《Y君のアピール例》
- ・短めのVTRの編集は必ず買って出る
・ワンコーナー作らせて欲しいと企画提出
・ロケ等での小型デジタルカメラ撮影は任せてもらう
などなど。
編集や撮影スキルは、業務の合間に自主練をして磨いているそうです。
Y君の努力は見事に評価されています。ディレクターになる日もそう遠くないのでは!
まとめ
修行期間であるADのうちは、あくまでもディレクター達のアシスト的存在です。
番組制作の醍醐味はADのうちではまったくと言っていいほど味わえません。
ディレクターやプロデューサーになって初めて「番組を作った」と言えるのかも知れません。
ただディレクターやプロデューサーになることが目標ではなく、「ディレクターやプロデューサーになって○○○な番組を作りたい。」と、制作者として終わりなき道を歩んでいくのが番組スタッフということです。
《石川かおり》