希望者全員65歳までの雇用義務 平成25年4月からの高齢雇用安定法

2013年3月22日

平成25年4月から、企業は希望者全員を65歳まで雇用しなくてはなりません。

具体的にどう対応すれば良いか判らず、対応を先延ばしにしている会社もあるのではないでしょうか。
現時点で対象者がいないから、と油断している事業主さんも、要チェックです!
最長5年間、雇用を延長する必要があるのですから、将来の会社の経営計画をたてるうえで、決して見逃せない内容です。

今回は、この高年齢者雇用安定法の改正について、企業が対応すべきポイントをまとめてみます。

どんな改正なのか
高年齢者雇用安定法では、定年を定める場合、60歳を下回ってはいけない、と定めています。
平成25年4月から、65歳未満の定年を定めている事業主は、労働者が希望した場合、全員を65歳まで雇う義務を負うことになりました。
その方法としては
・定年年齢を65歳まで延長する
・定年年齢を廃止する
・定年年齢後に再雇用する
が挙げられます。

ポイントは「希望者全員」というところです。
今までは事業主と労働者が労使協定を結ぶことによって、健康や業務遂行能力が一定の水準にある場合のみ継続雇用する、と定めることが可能でした。

しかし今回の改正では、働く意欲のある労働者を、最長65歳まで全員雇い続けることになります。

※平成25年3月31日までにこの労使協定を結んでいる場合は、段階的に65歳まで全員雇用を導入すればよい。
詳しくは厚生労働省のQ&Aでご確認ください。

この改正に対応せず、65歳までの雇用延長の措置をとらなかった場合は、法律違反となり、厚生労働大臣から指導、助言、勧告を受ける場合があります。勧告に従わない企業は、企業名を公表されることもあります。


なぜ65歳まで?

これはご存知の方も多いでしょう。

厚生労働省は改正の概要の説明で、改正の理由について
「少子高齢化が急速に進展し、若者、女性、高齢者、障害者など働くことができる人全ての就労促進を図り、社会を支える全員参加型社会の実現が求められている中、高齢者の就労促進の一環として・・・」
という書き出しをしていますが、一番の理由は、年金の受給開始年齢の引き上げとの関係です。

老齢厚生年金の受給開始年齢は現在、段階的に引き上げられており、最終的に平成37年4月から、受給開始年齢は65歳からとなります。
60歳までしか働けないと、年金受給開始までの5年間、無収入になってしまいます。
それを防ぐため、法律を改正したわけです。

高年齢雇用安定法改正

会社はどう対応すればよいか

≪必ずしも正社員のまま65歳まで雇用しなくてはならないわけではない≫
今回の改正は、定年年齢を65歳に引き上げることを義務付けているものではありません。
定年年齢は60歳のまま、定年後は嘱託社員、契約社員、パートタイマーなどの雇用形態に切り替えて働いてもらう、という方法もあります。
例えば1年の雇用契約を更新することで、最長65歳までの雇用を確保する方法もとれます。

≪60歳までの労働条件と同じである必要はない≫
雇用形態を切り替えることが可能であるのと同じように、賃金や勤務時間、職務内容などの条件も、定年前と同じである必要はありません。
短時間労働やフレックスタイム制の導入で無理なく働ける態勢を作る、定年後は賃金を見直す、職務内容や部署を変更する、定年到達時に役職から離脱する、など、労働条件を見直すこともできます。
通勤の負担を無くすため、在宅勤務にする、という方法もあります。

≪グループ会社で継続雇用することも可≫
自社での継続雇用ができない場合、一定の条件を満たすグループ企業であれば、グループ企業内での継続雇用も認められます。
詳しくは厚生労働省のQ&Aでご確認ください。

以上のように、60歳以降の働き方には、いろいろな選択肢が許されています。
改正の対応で制度を変える場合は、就業規則を見直すことも忘れてはいけません。
労働者もそれぞれの希望をもっていて、60歳過ぎても以前と変わらない働き方をしたい人もいれば、少しゆとりを持って働きたい人もいます。
様々な雇用延長の措置があることを知れば、事業主も労働者も、お互い無理のない雇用継続の方法が見つかるのではないでしょうか。

社会保険労務士 平倉聡子

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